ハハハと笑える話
親知らずを抜いた!
4年ぶり2回目
今これを書いている現在、左の親知らずを抜いて約1時間である。
4年前、右の親知らずを抜いた時はほぼ麻酔が効いておらず、口の中で道路工事が起きているのにただ耐えねばならなかった。
だが、今回は10分で終わった。拍子抜け。昨日は夜も眠れなかったというのに!
そして前回、泣きながら家まで自転車を漕いで帰ったのに、今回は本屋に寄ったり文章を書いたり余裕すらある。
貴方がこの親知らず抜きたての文章が読めるのは、耳まで効いた麻酔のおかげだ。
華岡青州万歳!
つまり今回の歯医者は優秀で、前回の歯医者はやはり下手糞だったのだ。
恐ろしいものだと思い込んでいたものが、実は何にも怖くなかったのだ。
最初にあんな医者に当たらなければ、4年前に左も抜いていたかもしれない。
ファーストインプレッションは大切である。
みんなにとって大したことのない痛みのない体験が、おぞましい体験として認識されてしまうのだから。
それにしても、世の中の人は気軽に歯を抜きすぎではないか。
指が飛んだり足を切断したりするのは想像するだに恐ろしいが、現代人は骨そのものである歯をヒョイヒョイと抜く。
自分の一部を簡単に切り離せるのである。通りで世の中荒んでる。
私の歯に意思はないだろうけれど、私の歯は歯としての務めを剥奪されてしまったのだ。
最後の晩餐はおやつに食べた堅あげポテトだ。
そして口の中には文字通り痛みを伴った確かな喪失感が残るのだ。
(でもまだ痛くない、麻酔効いてるから)
歯医者さんと言うのは、この世で一番残酷な仕事なのではないかと思った。
最後になるが、何を隠そう私の親知らずは親知らずではないのである!
なぜなら親知らずを抜くと、親に知らせたからである!
親知らずは親に存在を知られてしまい、もはや親知らずではなくなった。
役目も名前も居場所をも剥奪された私のかわいそうな歯。
さながら難民のような貴方、今までありがとう、さようなら。
そろそろロキソニン飲んどく!